GOOD NEWS NEIGHBORS
人気の観光施設や飲食店が並ぶ那須街道から、1本横に逸れた森にGOOD NEWS NEIGHBORSは計画された。森にはコナラやエノキ、檜やサワラなど広葉樹と針葉樹が混在して樹勢する雑木林であり、森の中を少し歩くと周囲の音が和らぎ、木々のそよぐ音や、川のせせらぎへと変わっていく。
計画にあたっては、那須に住まう我々はもとより、訪れた人達にこの心地よさを感じ、森に潜む生態系に耳を傾けてもらいたいと思った。
NEIGHBORSは現在、全9店舗からなる商業施設である。NEIGHBORS(隣人)の名から分かるように通常のテナント施設とは異なり、GOOD NEWSが主体となりながら、全国から集まった個性的な隣人達が商店街的なつながりを持ち、運営されている。
建物は、同時期に計画したFACTRYと合わせ、少しずつ角度を変えながら森を抱くように配置され、道路側には地場の杉板を羽織った黒の外観が続く。
交差点に面して設けたエントランスは、来訪者を誘い込むように大きく口を開けたトンネル状になっており、壁・天井は残土に枝や葉を混ぜて土壁を仕上げ、先に進むほどに狭まり、土中から森へと抜ける。
各店とも森側へと大きく開口部を設け、共有の客席となるテラス空間や目の前に広がる森を共有の財産とし、その魅力を店内以外にも創り上げていく。
テラス空間には大きく庇を設け、森で伐採した木々を列柱として使用している。うねりある立ち姿が森の木々と相成り、樹木の合間を抜け散策するように各店をめぐる。
列柱と連続するように、鎮座するケヤキは計画当初より、森の主のように在り、そのたもとから見上げる立ち姿が美しかった。
この大樹の下、土壁に囲まれるように中庭を設けた。
GOODNEWSのコンセプトである、皆がつどい食を共にする「那須の大きな食卓」を体現する場として、時に木漏れ日を落とす緑の傘となり皆を見守ってくれる。
「森との共生」をテーマとする施設内では今後、ゼロウェストを目指す他、各店舗ごとに自然に配慮した事業にチャレンジしていく。
森の循環の過程を手本とし、新たなまちがスタートする。
用途/複合施設 場所/栃木県那須町 時期/2022